『ヨコシマ・デイドリーム』役者所感

【中西祥子】
絡繰機械’s10周年記念第22回公演『ヨコシマ・デイドリーム』終演致しました。10周年記念公演ということで、いつも以上にたくさんの客演さんやスタッフさんに支えられての公演となりました。劇団員の私ですら逃げ出したくなるような状況下で、それでも最後まで前を向き続けられることが出来たのは、客演さんやスタッフさんの笑顔があったからこそです。大きな事故もなく無事に公演を終了させることが出来たのは皆様のおかげです。忙しい中、私たち絡繰機械’sのために力を貸していただき本当にありがとうございました。

今回は10周年記念ということでしたがチラシでも謳っていた通り、私としても「いつも通りの、特別な公演」という意味合いが大きかった『ヨコシマ・デイドリーム』。劇団史上最も過酷な状況下で、しかも自分自身の仕事の関係で稽古日数が大幅に削られてしまうという最悪な環境ではありましたが、10年という歳月は決して私を裏切らず、あの舞台空間の中できちんと私を生かしてくれました。

絡繰機械’sって、いつも無茶ばかりしていると思いませんか?もっと時間をかけて1つの作品を作ればいいのにとか、既成台本をやってみればいいのにとか、映像とかイベントとかに力を入れ過ぎないで舞台作品を丁寧に作ればいいのにとか、台本を読み込む時間をもっと長く取ればいいのにとか、普通ならそう思いますよね(笑)。正直なところ、私はカラクリの舞台の創り方がいいかどうかは分かりません。好きでこのスタイルになった訳ではなく、気づいたらこのスタイルで舞台を創るようになっていたって説明した方が正確な気がします。だからこのやり方が絶対に正しいとは思っていません。でも、少なくとも私の演技に惹かれる部分をお持ちなら、カラクリのこの手法は間違ってはないんだと思います。

出し切りました。本当に今回は。いつも通り全力で駆け抜けましたけど、そこには特別に私の10年間の集大成を詰め込みました。10年前の私には決して出来なかったであろう荒技を、あの舞台で出し切ることが出来たのは、これまでの積み重ねがあったからこそです。私は自分を誇りに思います。そして絡繰機械’sを誇りに思います。

これからも私たちは、多くの方々に支えられながら大好きな演劇を続けていきます。まだまだ表現したいものがあります。見てもらいたい舞台があります。そのためには解決しなければならない課題があります。たくさんの壁があります。だからどうかこれからも私たち絡繰機械’sに力を貸して下さい。支えて下さい。私たちは全力で向き合います。決して驕ることなくただ上を目指して、どこまでも、いつまでも。支えて下さる全ての皆様に愛と感謝をこめて。

【伊藤彩希】
ヨコシマ・デイドリームにご来場くださった皆様、お手伝い頂いた関係各位、それから過酷な状況下でも文句の一つも言わずついてきてくださった客演様方に、まずは厚く御礼申し上げます。どうも!伊藤です! 今回は10周年公演ということで、自分たちの力でホールを借りて大きい公演を打つ!というコンセプトのもと、いつもよりもさらに予算をかけ、出演者を増やし、お手伝いいただける方にも多数ご協力いただき、いつも通り大変な、特別な公演と銘打っておりました。とはいえ、自分たちのやることはいつもとさほど変わりません。いつもどおり真剣にやりました。そう、真剣にやりましたし、今の自分の限界はここだということだし、確かにその状況下でのできる限りのことはやったつもりですが、私にとっては非常に悔しい公演になりました。10年目にして悔しさナンバーワン公演です。初日が終わって劇場から出ていつもならほっと一息つくところを、唐津さんに怒られてもいないのに、もう唯々悔しくて、あまりの悔しさに差し入れで頂いた和菓子を食いながら泣くという、なんかもう逆に面白い感じになってしまいました。とまあ、そんな感じのことをちょっとつらつら書いていこうと思います。なんか長くなりそうだな。いやだな(笑)

自分で脚本をわずかに書くようになって気づいたんですが。…いや、突然脚本の話ですけど。関係あるんで!ちゃんと関係あるんで!「伝えていないことは一切伝わらない」ということに、なんか突然気が付きました。あ、伝わらないんだなって。伝えて無いことを分かってもらおうなんて、しょせん無理なんだなって。超能力者じゃないんだから。 美術のプランの絵を一枚描く、という作業中にもいろんな思いとか、考えとか、狙いとか、そういうものを背景に描きます。というかそれがないと描けません。ゼロからは何も生まれません。
以前は「そうはいっても私が何を思ってプランを立てようが、出来上がった絵に納得してもらわなきゃ意味がないから、ダメって言われたもんは問答無用でだめ」という考えのもとやっていました。それはそうなんですが、なぜそれを描いたか、どういった狙いでそうしたのか、きちんと説明したうえで判断をもらわないと、そのあとの直しがトンチンカンな方向に行きます。明確に言葉にする・できるということは物を作るうえでものすごく大切です。いっそ絵がへたくそでも全く構わない。絵なんか伝われば問題ない。いや、まあ私そもそも絵描けないんですけど。描ける人はすごいなーと思います。
でも自分の考えたものに対して、きちんとスキ無く説明できるということ、それができて初めて意味があります。絵だけで分かってもらおうなんて何様のつもりだと。分かるわけないんですよ。相手は私じゃないんだから。同時に、相手が何を考えて判断したのかも、聞かないと分かりません。演出が何を考えてるかなんて、正直全然分かりません。むしろ分かったら私演出家になれます。分からないことが問題なのではなくて、わからなくて諦めてはいけませんよっていう。投げ出しちゃ駄目だぜっていう。せっかく豊かな言語を扱える国に生まれたので、きちんと言葉にして、わかりやすく伝えるということ、これを今回から心がけ始めました。結果としてはまだまだ全然まだまだですが、言葉を飲み込むことが減りました。いや、大人として場合によっては飲み込みますけど。それでも、美術を考える上でのストレスが激減しました。 どうやら人間というものは、伝えたいことが伝わらないときに、そしてその状況すら絶たれたときに、多大なストレスを感じるようです。大抵の場合が、きちんと言葉にしていないからなのに、わがままな生き物です。でもだからこそ、伝わった時の喜びは言葉にしようが無いほど素晴らしい気持ちになるものなのだと思います。伝えられるように、この先頑張っていきます。やっとスタートラインに立った気分です。ああ!肝心のプランの話全くしてない!(笑) プランは…なんか…評判が今までで一番良かったんじゃ…ないですかね…。 いろんな方に褒めていただきました。報われます。ありがとうございます。 始めたばかり頃は、演劇関係の諸先輩方にいろいろなご意見をいただくことがありました。 もっとこうした方がいい、君の場合はこうだからああだ、あそこをこうしてみたらどうだ、と大変ありがたかったのですが、最近は「美術すごいねー」と言われることしかなく、いやすごいのは私じゃなくて結局最終的に考えてるの大抵演出家ですが、と複雑な(笑)気持ちになっていたものですが、久しぶりに今回ついてくださった劇場さんからご意見をいただきました。 「道具頭をきちんとたてなさい」と。道具頭というのは、大道具のリーダーのことで、現場で指示を出す人のことです。これは自信をもって言いますが、私がやっています。でも、本来は私の下にきちんと大道具のリーダーとして指示を出せる人がいた方が現場が上手く回るはずです。 そんなことを言ってもらえるのはすごく久しぶりで、すごく嬉しかったです。まだまだだなと。私全然まだまだで、もっとできる方法がいくらでもあるんだなと。しかもちょうど、「一人でこの人数に指示を出し切るのは本当に効率が良いのか」と疑問に感じていたところでした。ありがとうございます。 今の大道具班である、河野・坂本に頑張ってもらいます。2人とも頑張ってくれてはいますが、私の指示がないと何すればよいか全然わからない、というのは問題です。自分から動けるようになってくれるのを待っています。頑張ってー。

………長いな!

はい!そんなこんなで今回悔しかった話について! しようかと思いましたがやめます!長いから!内緒にします! 舞台の悔しさは舞台で返すべきです。言葉で伝える必要なんかありません。 もっとうまくなりたいと思います。
私、役者が好きです。 こんだけ美術のこと書いといてなんだよって話ですが、 カラクリの劇団員と一緒に物語の中を生きる事が、楽しくて楽しくてしょうがないんだと思います。 カラクリでそれを味わうためにはやらなきゃいけないことがたくさんあります。 年々増えていく一方です。 年々過酷になるばかりで、ちっとも楽になりませんし、役者としての時間は減っていく一方です。 本当に耐えられなくなったらもう辞める、と、2年前のコンクリートシアター後、どうしても舞台に戻れる気がしなかったときに、最後の手段として決意しました。 ここまで続けてこれました。辛さよりも続けたい気持ちが勝ちました。 私は自分で選んでここにいます。それに対しての後悔は1㎜たりともありません。 周りの環境も変わってきました。 今まで通りにはいかない時期が来るかもしれません。 それでも、きちんと話し合って、伝えるべきことを伝えて、後悔の無いように進んでいきたいと思います。 では、最後にいつもどおり必死に駆け抜けてくださった、すっかりおなじみの劇団員、ありがとうございました。

【たばるとも】
『ヨコシマ・デイドリーム』無事終演しました。ご来場の皆様、お手伝いいただきました皆様、応援してくださいました皆様、本当にありがとうございました。

諸事情により10年の中で今回が一番、作品への取りかかりが遅く、非常にタイトなスケジュールとなってしまいました。初めて台本をもらったのが公演本番の36日前、4ページほど。そこから作品創りが始まりました。そんな中、客演さんには本当に助けられました。このスケジュールで焦りがないはずがないのに、顔を合わせるといつも笑顔で稽古に臨んでくださいました。感謝しかありません。風希くん、遠藤さんは学生で東京からの参加で毎週土曜日に来て日曜の深夜バスで帰るというハードさだし、柿田さんも県外にもかかわらず稽古に一生懸命通ってくれて、5月なんてほぼ毎日だったもんね。小粥さん、狐野さんはカラクリの公演の直前に自身の公演があったにもかかわらず出演をしてくださって相当大変だったと思うし、川口さんは音楽活動の忙しい中の参加なので、一番稽古に来られないのではないかと想像していたのですがなんのなんの。稽古場でも落ち着いて見えて、でもその熱量はすごかった。大変な中、本当にありがとうございました。 作品に関しても、大人数ならではの舞台空間を作ることができたのではと思っています。

いつも応援してくださっています皆様や関係者の皆様など、本当にたくさんの方々に支えられ助けられカラクリは10周年を迎えることができました。皆様の応援がなかったらわたし本当にここまで続けられたかな?とさえ思います。みなさまのおかげです。本当に。ありがとうございました。これからも変わらず絡繰機械’sを応援していただけたらと思います。

【柳川智彦】
絡繰機械’s10周年記念_第22回公演『ヨコシマデイドリーム』も無事に終演を迎えることが出来ました。御尽力を賜りました関係各位に厚く御礼申し上げます。
さて、今回の公演、劇団にとっても私個人にとっても、特別な、そしていつもどおりの素敵な公演となりました。 それは客演の皆様のお陰です。スタッフとしてお手伝いいただいた関係各位のお陰です。御来場いただいたお客様のお陰です。共演した劇団員のお陰です。素敵な写真も映像も撮っていただきました。 こんな有り難いこと、素敵なこと、たったの10年ぽっちじゃまだまだ物足りない。だからこれからもカラクリマシーンズを宜しくお願いします。
個人的には…開演直前の幕袖で共演者全員と握手をするというのが、芝居をはじめた当初からの私の集中力の高めかたであり験担ぎだったのですが、しばらくやっていなかったものを今回復活させました。何となく初心に戻ったような、新鮮な気持ちで舞台に望むことができました。嗚呼、新しい10年のスタートを切ったんだなぁという感覚があります。

【河野丈志】
10周年記念公演、観に来てくださった方、応援してくださった方、ありがとうございました。 公演を終えて今思い返してみると、学びの多い公演だったなと感じます。持っていた考え方や意識のあり方では足りなくて、根本からいろいろ考え直さなくてはと思いました。そしてそれが分かった分、いろんな物事を成していくこととの距離も感じます。でもやれることは一歩一歩を何が欲しいかを、意味まで考えて、具体的にしてやっていくしかないことも分かりました。なかなか難しいところもありますがその一歩一歩を進んで行きたいと思います。 とはいえ、これからどんどん暑くなってくるし、雨の時もあるのでその中でもどう体を作っていくかも課題です。栄養も含めた体調管理も大事だと感じています。 そういった部分も学びながら、ちゃんとご飯を食べ、コーヒーを淹れて、また一歩一歩やっていきたいと思います。

【坂本竜也】
10周年!10周年!と作りあげた舞台も、あっという間に過ぎ去っていきました。 今まで支えてくださった皆様はもちろん、今回が初めてという方も、この10周年記念公演が存在できたのは、ご来場してくださる皆様のおかげです。これは僕個人の考えですが、お芝居はあくまでお客さん頭の中で完成するものだと思っています。 目の前に海があるわけでもなければ、人が死ぬわけでもない。自分がワニだって言ったって、人間以外の何ものでもない。人の想像力は計り知れないですね。 皆様がそれぞれの白昼夢を見ることができたなら、幸いです。

さて今回の僕の役(ザック)なんですが、一言で表すなら「ヨコシマドリーマー」ですかね。 自分の利益のために大陸へ向かい、一攫千金を狙う、なんともわかりやすい男じゃないですか。 ただ、分かりやすいキャラはきちんと演技してあげないと、幼稚な人物になりやすいと感じています。 練習中に演技を派手にしようと模索していたら、周りにイライラ当たり散らして自分では何もしないって感じのキャラになってしまった時がありました。 その時、あ~このキャラすぐに死ぬなって思ったんですよ。なんというか未来や将来性が見えないというか、これからのお話の流れに必要ないなと。もっとこう、このキャラは今までどんなことを考えて、どんな言葉を口にしてきたんだろうなんて考えてました。 その時取り入れようと思い付いたのが、「ドリーマー」要素です。 邪で嫌みで冷めた人間、だけど新しいことに前向きで、文句を言いつつも自分が先陣をきって確かめないと気が済まない、みたいなコンセプトで演じてました。 人間を演じる上で二面性ってとても大事ですよね。まぁ実際に皆さんの目にどう映ったのか気になりますが。というかですよ、アンケートにザックのこと全く触れられてないんですよ! 脇役ですから仕方ないのですが、これだけ演技のことを語っておいて実際はダメダメだったら目も当てられないですよ。ぜひザックについてご感想がありましたらfacebookなどに送ってください。