『超然ゴーインダウン』公演所感

2013年6月29-30日に行いました公演『超然ゴーインダウン』の所感です。

【中西祥子】
絡繰機械’s第14回公演『超然ゴーインダウン』無事終演しました。 暑い中にも関わらず、全てのステージがほぼ満席という大盛況で終われたことを嬉しく思っています。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。 また大きなトラブルもなく無事公演を終わらせることが出来たのも、お手伝いして下さったスタッフの皆様、そしてご協力いただいた関係者の皆様のおかげです。ありがとうござました。 そして劇団員同様、最後まで私たちの舞台に付き合って下さった客演の皆様には深く感謝しています。 至らない点も多々あったと思いますが、次回以降の公演に活かしていきたいと思いますので、今後とも絡繰機械’sを宜しくお願い致します。

■役者として
今回は『シュバダバ』同様、二つのキャラクターを演じさせていただきました。 天界でゲームを楽しむ神「アマト」と、地上で暮らす漁民の少年「ラルー」。タイプが全然違う二役だったので、比較的演じ分けはしやすく、楽しんで役作りに取り組むことが出来ました。私のことを全く知らないお客様に「途中まで別々の役者さんが演じてると思ってました」と言ってもらえたことが一番の成果だったと思っています。 自分の得意分野ともいえる化け物系と元気系のキャラクターだった「アマト」と「ラルー」。そして『シュバダバ』以降、私のお家芸的になってきた本役を複数兼ねるという手法。何か新しいことに挑戦するというよりも、自分の持っているギミックを高めていくという意味合いが今回の公演は強かったと思っています。なので、結果として何かが大きく進歩したという感覚はありませんが、より緻密により深く、自分の芸を高めることが出来たと感じています。
役そのものよりも、今回は役者としての能力が高くなったような気がしています。すごく初歩的な話なのですが、前回までの公演と比べて体力がつきました。飲み物を飲めるようになったことが理由だと思います。 胃に何かを入れてしまうと本番中におなかが痛くなってしまうので、舞台本番日は食べ物も飲み物も一切口にしない役者だったんです。でもその影響で、ここ数回の舞台では舌が回らなかったり足を踏み外してしまったりという失敗が少しずつみられていました。体重制限のために糖分を減量させていたのも大きかったと思うのですが、このままでは役者としていい演技が出来ないと思い、今回の舞台では稽古時から色んな飲み物を試し、糖分制限も軽くして本番に臨みました。結果、ここ最近の舞台では最高のコンディションで舞台に立つことが出来ました。暑い中、4ステージをフルで回しても体力がもつだけのスタミナがとれたことが本当に嬉しかったです。もちろん体重は増えましたけど、摂取カロリーを気にするよりも筋力をつけることに頭を切り替えていきたいと思います。

■スタッフとして
衣装としての腕は確実に上がってきていると実感することが出来た今回の舞台。9人分の衣装をたった一人で用意出来たことに、自分自身とても満足しています。神様の衣装やヘッドピースなどはオリジナルで作り上げたものなので、今でも愛着を感じています。少しだけですが衣装として肩書きがついていることに自信がもてるようになりました。そして本当に少しだけではありますが、衣装としてもっと自分で作れるものを増やしていきたいと前向きに考えるようになりました。スタッフだから仕方なくという考えから、衣装を作ってみたいという考えに変わってきたことは、私の中では大きな変革なのです。この気持ちが維持出来るようにこれからも努力していきたいと思います。

■劇団員として
客演やオペレーションスタッフ、当日スタッフや関係者各位等々も含め、今回は本当に多くの外部の方々に協力をしてもらい公演を成功させることが出来ました。 私たち絡繰機械’sは大きな組織のように見えますが、実質の劇団員は本当に少なく、実際の現場では手が回らず関係者の皆様に不快な思いをさせてしまったことが多々あったことを反省しています。どんなに親しくても、劇団員とそうでない方との区別はしっかりしていく必要があるということを改めて痛感しました。誰かが把握していればいいというほど劇団員がいるわけではないんだから、自分が把握しなければいけないんだという当事者意識を今まで以上に強くもたなければいけない状況なんですよね。役者としてスタッフとしてだけでなく、劇団員としての自覚と責任をもう一度見つめ直すいい機会になりました。 “劇団員が少ないから”という理由をあまり使いたくないのは私個人のつまらないプライドなんですが、それは“もっと頑張れたはず”という思いがどこかにあるからだと思ってるんです。他の劇団員は本当によく頑張ってると思います。多分、限界くらいに。でもそれに対して私自身はどうだっただろうかと考えたときに、私はまだ限界じゃない。限界になることが最善ではないということは承知しているんですが、私がもっと頑張ればもっと楽になることも増えるんじゃないかと考えてしまいます。一応これでも看板役者ですから、劇団の一つくらい背負わなきゃ看板なんて名乗れないわけなんです。もう少し前に進めるように精進ですね。

・・・・と、結局今回も長い長い散文になってしまいました。短くしようと思っていたはずなのにスミマセン。 これからも絡繰機械’sはよりよい舞台作りを目指して努力していきます。最後まで読んでいただきありがとうございました。

【伊藤彩希】
絡繰機械‘s第14回公演「超然ゴーインダウン」にご来場下さった皆様、本当に、本当にありがとうございました。 お手伝いいただいた関係各位、本っ当にお疲れさまでした。すごくすごく助けられました。 最後まで諦めずに頑張って下さった客演の皆様方、とっても素敵でした! そして過酷な状況の中一緒に頑張らせてくれた劇団員、辛かったですね!(笑) でも、楽しかったです。他の何にも代え難い、とても幸せな時間でした。 それもこれも、いつも応援して下さる皆々様のおかげです。 本当に、本当にありがとうございました!!

私は今まで芝居を続けてきて、「ここが転機だ」と思ったことが2回ありました。 一回目は「阿吽」と言う芝居。 とにかくしんどくて、毎日怒鳴られて泣いて、稽古場にいるだけで演出をイライラさせるという、 八方塞がりな状態でした。 毎日毎日夜中の2時3時くらいまで倉庫で大道具を作り、 家に帰って仮眠して仕事に行って稽古に行ってまた大道具作って、 制作の途中報告して怒られて泣きながら倉庫に行ってやり直してという、 ま、私が悪いんですけどねー(笑)
偶然大道具の居残り作業中に母方の祖母が亡くなったりしまして、 でも作らなきゃ終わらないから、誰かが代わりにやってくれるわけじゃないから、 そのまま作業を続けていた時に、「この公演で辞めよう」と思ったのでした。 なんだこれと。そこまで懸けなきゃいけないのかと。報われることも無いのに。 はい、中2病でした!当時の自分を殴ってやりたいです(笑) それがね。この芝居が最優秀賞をとったんですよね。 その上祥子さんが主演女優賞取って、唐津さんが特別賞とって。 見事3冠。カラクリ一人勝ち。すげー、つって。 そして、私のこの足の引っ張り具合はなんだ、と。 出来あがった美術も泣きながらやった割には、なんかこう、微妙な感じに仕上がり、 冒頭から3Pに渡る長セリフをいただいたにもかかわらずなんかもう下手くそ過ぎて。 なんだこれと。なんの役にも立ってないぞと。 悔しかったので、辞めるのを辞めました。 辞めるのなんていつでも出来る。 でも一回辞めてしまったら、戻ることは難しい。 死ぬわけじゃないし、もうちょっと頑張ってみよう、と。

2回目は、3部作の最終章「stories~水を遣る人」でした。 私はこの公演から、自分自身の意思で芝居を続けることを決めたのだと思います。 「あ、私多分、もう芝居をしなくても生きては行けるな」と感じた公演でした。 それまでは、辞めたら死ぬんじゃないかと思ってました。 はい、未だ中2病です!すみません! 芝居をしなくても生きていくだけなら多分出来る。 だからここからは本当に「やりたい」って思うからやるんだと。 清々しい気持ちでした。 芝居が楽しくなったのはここからです。 肩の力が抜けたのもここからで、ある程度寝なくても平気になったのもここからです。

えー、はい。ここまでですでに長々と書いてしまいましたけどもー!! 今回は3回目の転機だったと思います。 何がと言われると困ります。 ただ、公演中ずっと、目の前にY字路があるような感覚でした。 本番一週間前あたりからは 「あーもう道とかマジでもうどうでもいい。とりあえず公演成功させる!なんとかする!なんとかする!!」 とか思っていたので、そんなこと忘れていましたが(そこら辺が駄目) どちらの道もきっと私には細すぎて歩けないので、 どうにか真ん中をぶっ壊してですね、広い一本道を作れたらいいなと思います。

いやー、しかし、楽しかったですね。そして苦しかったです。悔しかったです。 それも全部ひっくるめて、こんな幸せな事は無いと思いました。 ここ最近どうしても短期間で公演を作ることが多くてですね、 流れ作業みたいになってしまって、自分が何をやってんだか分らなくなりかけていたところだったので、 初期のような寿命を削る系の作品を、個性豊かな客演さんたちと倒れそうになりながらも作り上げる事が出来て、公演を作った感がありました。 そうだったと。 私の好きなものはこれだったと。 強く感じる事が出来ました。 好きだからやってんだ、と。 そんな基本中の基本に立ち戻ることができました。
いつもは役者として、美術としての所感をつらつら書くんですが、 今回はもう「未熟でした」としか言いようがありません。 後ろ向きと言うか、落ち込むとかそういった意味では無いところで、 「っあー、もう、私へったくそだなー」と思いました。 こんなに素敵な役を貰って、すごいシーンを託してもらって、 私はどうしてこんなに何も背負えない。 どうしてこんな下手くそなまま7年も舞台に立ってこれたんだろうか、と。 公演期間になってから思っても遅いんです。 そのシーンを貰った時に思っても遅いんです。 出来ないから。その場で出来ない事は、その時の自分に出来ない事だから。 私は今まで祥子さんやたばさんが背負ってくれていた舞台の片隅に立っていただけで、 欠片も背負えていなかったのだな、と。 そしてその背負えない私の体裁を、演出がなんとか整えてくれていたのだな、と。 なんかもう言葉にならないですね。言葉にならない恥ずかしさですよ。 完全に足でまとっている私ですが、この人たちとちゃんと肩を並べられるように、 頑張りたいと思います。
歳を重ねるごとに周りの反応は、「若いのにすごーい!」から、 「いつまでそんなことやってんの?」に変わっていきます。 納得させるには、上手くなるしかない。 上手くなることが唯一の手段です。がんばります。

あとはあれですね。劇団員が欲しいですね。 なんかもう私、増えない気がしてきました。 というのは、新人に自分たちと同じレベルを求めてしまうんですね。 役者としてなら良いんです。 上手くなってもらわなきゃ困るし、上手くなる気が無いなら辞めちまえって思うし。 難しいのは、「劇団員として」の立場に立たされた時。 例えばですよ。 入ったばっかりの新人が居たとして、その子が 「私の方がきゅんさんよりも絡繰機械’sの事好きです!!」とか言ったとしても、 誰も信じないと思うんですよね。 我々が頑張れるのは、倒れそうになりながらも踏ん張っていられるのは、 プライドがあるからだと思うんです。 7~8年かけて此処まで劇団を育ててきて、 懸けてきたものや、犠牲にしてきたものもたくさんあって、 でもその時々でちゃんと、自分の意思でカラクリを選んできたんです。 その時間の重みだとか、積み上げてきたものだとか、 そういうものを持っているから頑張れるんだと思います。 それを入ったばっかりの、まだ何も懸けてない新人に求めたって、 我々ほどカラクリを愛せるかといったら、無理だと思うんですよね。 辛くなるだけなんじゃないかと思って。 好きだから頑張れるんだもの。 好きになる前の人に頑張れっつったって、無理だもの。 だから、好きになってくれたら嬉しい。 カラクリを好きになってくれる劇団員が欲しい。 そのために我々は、好きになってもらう努力をしなければなりません。 何に心惹かれるかは人それぞれですが、 一生懸命続けていくしかありません。 「自分もああなりたい!」と思ってもらえるような、カッコいい先輩にならなければなりません。 あー、欲しいな。10人くらい欲しい。劇団員。 とはいえ今回、公演終了後、さまざまな方から嬉しいお言葉をたくさんいただきました。 この、自分でもよくわからない情熱のような衝動のようなものを、 芝居が好きで好きでしょうがないんすよー!って言う気持ちを、行動を、 理解してもらえるという事が、こんなにも心が震えるものだとは思いませんでした。 嬉しかったなー。 嬉しくて泣いたのなんか久しぶりですわ。
お客様にも恵まれた公演でした。 そしてなにより客演の皆さま、スタッフ・お手伝い頂いた皆さま。 我々の情熱を受けて立っていただいて、一緒に世界を背負っていただいて、 本当に、本当にありがとうございました。 楽しかったです! 機会があれば、また是非ご一緒したいです!!

さてさて。書きたいことはまだまだありますが、ここらで閉めさせていただきたいと思います。 皆さま本当に、本当にありがとうございました!! 私、上手くなります! 是非是非次回もお楽しみにー!!

【たばるとも】
「超然ゴーインダウン」にご来場いただきました皆様、本当にありがとうございました。 ご協力いただきました皆様、そして客演の皆様にも改めましてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

今回の公演、客演さんなしでは成し得ない公演でした。 もともと企画段階で、客演さんを多くお呼びして派手にやろう!というのがあったのですが マンパワーとしてだけでなく、本当に内面といいますか、皆さんの精神的な力というものを強く感じました。ものすごいパワーをいただきました。そして助けられました。これは劇団員の誰もが思っていることだと思います。皆さんと一緒にこの公演を打つことができて本当に良かったです。嬉しい!ありがとうございます。

「超然ゴーインダウン」、私の好きな公演のひとつになりました。まあどれも好きなんですけどね(笑) 今回のアブガルという役柄や舞台における役割・表現方法など、これまで私がさせていただいたものとは違うものがあり、とてもやり甲斐がありました。新鮮でした。そのすべてがすごく楽しかったです。そしてその分、自分の未熟さを痛切に感じました。気づくことができたことに感謝して、また次へ向けて頑張っていきます。

【河野丈志】
公演を終えて日常に戻ってみると最後のあの一ヶ月は怒濤だったと笑えます。本番一日目の最初の公演後はみんなぶっ倒れてましたし。そんな中、一緒に熱くなってくれたお客さんや手伝ってくれたスタッフにすごく感謝しています。
今回は客演さんも多くてそれが楽しくて心強かったです。殺陣も大勢でできるのが楽しくて面白かった。映えますしね。まぁ、自分は最後には殺されてばかりなのですが。 無事終わってこうやって落ち着いてみるといろいろなことがあった公演で、本番前の通し練習で自分がちょうど動かしていた太陽のモチーフが落ちてきてあわあわしたり、稽古場に向かう途中で車が故障してあわあわしたり。ほんと本番でなくて良かったと思います。でも大事なのはそのときどう素早く対応するか。もっと早く正しい判断もこういった経験も積み重ねていけばできるようになっていくと思います。そういう意味でも学んだことは多く、次に活かさねばと思います。