『超然ゴーインダウン』web企画。今回の目玉のひとつ、多彩な客演さんたちをゴーイン座談会と称してご紹介。
第1弾は演劇集団浜松キッドの山口弘史さん、東三河の安食宏美さんに、たばると河野がお話を伺いました!
——客演について
河野 今回は東三河より安食宏美さん、演劇集団浜松キッド(以降、キッド)より山口弘史さんに来ていただいて、いろいろ話を聞いていきたいと思います。お二人は前にも客演してくれているんですよね。
たばる そう、安食さんは『即決ロックンロール』(以降、即決)と『親指アンダーワールド』(以降、親指)で、山口さんが『Dual』と『親指』。
安食 『Dual』はからっかぜさんに見に行った覚えがある。
河野 自分もそのときお客さんだったんですよ。
安食 私はお客さん期間がけっこう長くて……。えと、『王の剣』は見た。
たばる えー(驚)、『王の剣』って 絡繰機械’s(以降、カラクリ) っていう名前になる前だから相当……
安食 その前から祥子さんの事は知ってて。あっ、舞台やるんだって見に来て……で、はまった。
たばる 山口さんは客演する前ってカラクリの公演って見てました?
山口 見てないんですよ。最初、客演の話をもらったときはキッドで『航海綺譚』という舞台をやったときで、まだ入って一年目だったんで。
安食 えっ、てっきり長い事やってるんだと思ってた。
山口 それまでほんとに、浜松に劇団がいっぱいあるって知らなくて。キッドに入ってから知って、見に行けるとき見に行こって思ってるうちに、客演の話もらって。話は聞いていたんですよね、「カラクリは厳しいぞ」って(笑)
たばる じゃあ、もう完全にカラクリの噂だけで出たんだ?
安食 そういう人もいるんですねえ。私は客演の話もらったとき、七転八倒しましたよ(笑)。どうしようどうしようって。ずっとお客として見てたから、やりたいんだけど、でもでもどうしようって感じで。
——稽古について
たばる お二人はそれぞれカラクリ以外のところでお芝居やってて、そっちの稽古もいろいろ経験されてるやんか。それはやっぱ、違うもの?
安食・山口 全然違いますね。
山口 カラクリの練習が俺、1番やりやすいっていうのがあって。台本が一気にできてないっていう。
一同 (笑)
山口 キッドとかだと最初に1冊あるんで、バンッて出るじゃないですか。「じゃあ、これ覚えてきて」ってなるとこんな分厚いの、一週間で覚えられない。でもカラクリは週によってできあがっていって覚えていけるから、それがすごいやりやすい。すごい手作り感があっていい。
たばる そうやね。で、その稽古の空気感を見てからその次を決めるから、少しずつ創っていく感覚はたぶんあるんだろうね。
山口 なんかこっちが小説読んでいるみたいですよね。俺、この後どうなるんだろうって。
安食 それありますね。台本もらうときにワクワクする。どうなったんだろうって。
山口 『親指』のとき、俺、たいがい仕事で遅れていくじゃないですか。稽古場のドア開けた瞬間みんなに、山口さん(の役)死んだよって言われたりして(笑)
一同 あはははは。
山口 なんだよ、言うなよって(笑)。でもある意味、それも楽しいですよ。言い方悪いかもしれないけど、台本が先にできちゃってると稽古期間が長くてだらけちゃったりもして。それが短いスパンで集中してく感じだと、モチベーションも作りやすいし、緊張感が保てる。
河野 逆に稽古で大変だったことってあります?
山口 それはやっぱり、体力的に(笑)
安食 ですよね(笑)
河野 そこはカラクリの見せ場というか。激しく動いたりとか、自分が客として見てた時に、そこがやっぱいいなっていうのがあったんですよ。たばるさんは経験長いぶん、慣れとかもあるんですか?
たばる いや大変よ(笑)。体力は多分、カラクリはじめた頃に比べて全然ついてると思うよ。でも7年? っていう年月がさ、単純に歳も食うわけ(笑)。カラクリの女子の中では最年長わけで、けっこうがんばってね、ついていってる。
——初舞台について
河野 自分は『親指』で初めて舞台に立ったんですけど、初舞台の事って覚えています?
山口 はじめて舞台立ったときはもう内臓、口から出るかと思った。
たばる 初めてってキッドさん?
山口 そうですね、『さくら』っていう、現代に新撰組の幽霊が出てくる話で、それのエキストラで出て。自分は普段バンドやってるんですけど、バンドのときって出てきたらお客さん、もうワァーッて、盛り上がってるんですよ。でも、芝居って照明がパッて点いた瞬間にお客さんこっちガン見で。なんか北朝鮮みたいなっているんですよ。すごいおりこうさんみたいな。
一同 あはははは。
山口 一発目の印象はやっぱそれっすね。
安食 あたしは最初の頃、そんな客席見る余裕なかったな。高校演劇の大会が初舞台だったんですよ。だから公演とは違ってそういう感じではなかった。それだったら大学の演研に入って最初の舞台が、そういう意味では印象が強いかもしれない。そのときは名古屋の大須の七ツ寺共同スタジオでやったんですけど、せまい小屋でお客さんとの距離も近くて、で、おぉ…って。だって足下にお客さんがいるんだもん、最前列が。で、見上げてる(笑)
河野 今回からっかぜさんですから、正にそんな舞台ですよ。
安食 あそこ、ドキドキしますね。
たばる あ、そっか、からっかぜさんでやるのは初めて?
安食 初めて。もう何回も見には行ってますけど。最前列で見る率が八割くらい(笑)
たばる そうそう、安食さん、もう笑い声でわかるからね。安食さんが来てるぞって(笑)
一同 (笑)
安食 いる、奴がいるみたいな(笑)
たばる 安食さんはバラシ(撤収作業)もすごい手伝ってもらってて。
安食 割と好きなんですよ。友達の劇団さんはよく見に行って、ばらしを手伝わせてもらって、一緒に打ち上げして帰るみたいな(笑)。もう盗めるものは盗んでこないとみたいな根性が働くんで。
山口 そのスタンスがいいっすね。
河野 自分、そのバラシのテンションが好きだなっていうのがあって。
安食 怒号、飛び交ってますけど(笑)
河野 そうなんですけど、みんなが片付けるという1つの方向に向かってガーッてなっているのが心地よくて。
山口 でもそれ心地いいっていうの変態の領域ですよね。
一同 (笑)
山口 でも「早く片付けろ!!後、1時間しかねぇぞ!!」っていうあの勢いがあるから身を入れて片付けられるっていうのはありますね。
安食 でもあれ、1日続いたら嫌ですよ。まだ終わらねぇって(笑)
たばる うちもばらし好き。すごい燃える(笑)
山口 じゃあ、もう公演後お客さん残しといて、ばらし見ていきますか?って。
一同 あはははは。
山口 お客さん泣いてくれるかも。ドキュメンタリーですもん。やばい、みんな一つになってるって(笑)
——映画や俳優について
河野 よく見る映画とかあります?
山口 舞台終わった後、必ず見るのは『スタンド・バイ・ミー』ですね。
安食 なんか山口さんっぽい(笑)
山口 子供心に戻れるというか。あの映画は大人のきっかけとかそういうところがメインであったりするんですけど、そうじゃなくて。前半の下らんくだりの、子供たちが戯れているのが…(笑)
一同 あぁ。
山口 ロードムービーとかがすごい好きで、旅をするような。公演終わったから旅行しようみたいな気分で、終わったからロードムービーを見るみたいな。だから必ずあれ、見ますね。俺、映画に関して全然記憶力なくて、何回見ても楽しめる。
たばる いっしょかもしれん。うちも記憶力が…。
山口 なんかわかるでしょ、だって1ヶ月後、あれっ、あのシーンのあれってどんな感じだったかなみたいな(笑)
たばる えー、うち、山口さんすごい映画好きだし、だからいろんなの覚えてて、どんどん見てるんやと思ってた。
安食 あたしも思ってた。
山口 『スタンド・バイ・ミー』とかに関してはもう内容、全然覚えてないですね。
安食 毎回見てるのに?
山口 初めて見たのが確か小学生の低学年の頃で、自分は全然覚えてないんですけど、親父が「おまえは『スタンド・バイ・ミー』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』しか借りんかった」って(笑)
一同 あははは。
たばる 安食さんも割と見ます?
安食 あたし、そんな見ないんですけど、映画だと北野武が結構好きでよく見ますね。
一同 へぇー。
安食 一度やってみたいとよく言っているのが、(銃で撃ち殺すマネをしながら)「ばかやろ、このやろ、バンバンバンッ!!」っていうアレ。どこでやるんだっていう(笑)。結構5,6年言ってるんですけど、やりようがない。
山口 確かに銃、乱射したら、もうそれこそ…(笑)
安食 しかも残念な事に私がやってもかっこよくないっていう。
たばる あたしは姐御っぽいと思うよ。
安食 あ、高校の頃は岩下志麻姐さんのような女性になりたいって言ってました。ビシって着物着て、和室で抹茶点てながら「うちがたまとったる」っていう姐さん(笑)
たばる 安食さんって普段は割とチャキチャキしてて思った事もズバズバ言う、だけどたまにおっちょこちょいな時がある、そういうイメージなんやけど、いざお芝居とかで出るとほんま、うちはお姉さんっぽいなって感じる。
安食 姐御の方のお姐さんじゃなくて?
たばる 両方持ってるなって。姐御みたいなときもあれば、「あら、やだぁ」みたいなお姉さんも。そのギャップがすごい面白いなぁって思ってた。あたし、それ好き(笑)
安食 でも意外とおっちょこちょいはよく言われる(笑)。なんかそれはもう知ってる人にはバカにされる。これだから安食は、みたいな(笑)
河野 岩下志麻姐さんが出てきましたけど、目指しているとか、好きな役者とかいます?
山口 何人かいるんですけど、自分が神と崇めているのが、ジム・キャリー。
一同 おぉ(笑)
山口 飲み会とかであれできりゃ、いいなって。舞台だけではなくて、普段あんな明るい人間でありたいみたいな。で、役者としてはクリント・イーストウッドみたいな、渋い感じがすごい好きで。
河野 なんか方向が全然違いますね。安食さんは?
安食 この人がすごい好きというのはそんなに言うほどなくて。映画見て、この人いいじゃんというのはあるけど、この人が出てるから見ようというのはあまりなくて。北野武ぐらいかな。
河野 それは役者としても?
安食 そう、戦場のメリークリスマスがすごい好きで。あれを見て北野武が気になりだして北野映画、結構見た。あのときは北野武もかっこ良かったし、坂本龍一がかっこ良かった(笑)
一同 (笑)
安食 すごい満面の笑みで言っちゃったよ(笑)。
——芝居あるある
河野 今回の会場のからっかぜで『シュバダバ』をやったとき、舞台に出て数秒で、せっかくした目張りが、汗で流れちゃったんですよ。
たばる 『即決』の安食さんもヤバかった。汗はヤバいよね、いろいろ。
安食 だってあのときの衣装、恥ずかしい事になってたもん。ストップモーションしているシーンで、伝っていった汗が落ちて、下に置いてあるスコップに当たって「たーん、たーん」って。もう、どうしよう、これって(笑)。
山口 大概、俺、本番よく声涸らす。お客さんにまで心配されたりして。あっちゃいけないことなんだけど(笑)。
たばる 『Dual』のときの山口さん、やばかった(笑)。
山口 一番ヤバかったのはスモークマシン(照明効果のため、煙を噴出する装置)の…
安食 伝説の(笑)。
山口 加湿器と勘違いして、スモークマシンの前で思いっきり深呼吸しちゃって。誰かが見つけて、吸わない方がいいよって(笑)
一同 あはははは。
安食 あれ以降あたし、スモークマシン見る度、思い出してニヤニヤしてましたもん。
山口 なんかね、湿ってない感はあったんだけど(笑)。でも最近あんまり声涸れなくなったんですよ。なので今回は期待していただければ。
安食 私は暗転中に失敗するというのがよくある。真っ暗で舞台端に張ってある目印を見落として落ちるとか…。あと恥ずかしいのが、パネル裏で隠れているつもりがパネル表にいて、照明点いた瞬間、お客さんから丸見えとか。
山口 立ち位置間違えて、照明が点いた瞬間、体の半分くらいしか照明が当たってないとかも恥ずかしいよね。ものすごい深刻なシーンで、「俺はどうして…」なんて言っているのに、でもちょっとずれるみたいな(笑)
たばる でも寄るのも……
山口 そう、これで寄ったら負けだよなぁっていう(笑)
安食 でも照明を点けた方としても「おまえぇ、何やってんだよぉ。なんでそこに立ってんのぉ」って思う(笑)
山口 そう、目印あるじゃんって(笑)
安食 あと私、本番近くなると結構、失敗する夢を見る。暗転中に片付けなきゃいけない椅子を片付け忘れた夢を見て、バッて起きたら部屋が真っ暗だから暗転と勘違いして「やっべ、ほんとに片付け忘れた、どうしようっ!!」ってなったことがあって。もう10年も前の話なのに、その夢を見てどうしようってなっている夢を見る(笑)
一同 あはははは。
山口 でもそれがあるおかげでうまくいったりするんですよね。
河野 なんかもうお告げですね(笑)
たばる お前、もっとちゃんとやっておけっていう。
安食 そっか、あの夢を見てたからあたし、これくらいのおっちょこちょいで済んでるんだ(笑)
河野 さて、今回はどんな夢を見る事になるんでしょうか(笑)。今日はいろいろ話を聞かせていただいて、ありがとうございます。公演まで、まだまだよろしくお願いします。
安食・山口 よろしくお願いします。